ヒト幹細胞をサルの胚に入れ培養 倫理面で問題視も

ヒトの細胞を含んだサルの胚が、研究施設でつくられた。15日付の米科学誌セルで発表された。これを受け、生命倫理をめぐる新たな議論が沸き起こっている。この研究はアメリカと中国の合同チームが取り組んだ。米ソーク研究所のホアン・カルロス・イズピスア・ベルモンテ教授がチームを率いた。

科学者らは、ヒトの幹細胞をサルの胚に注入。成長を続ける胚を20日間研究した。幹細胞は、体のさまざまな部位に分化する能力をもつ。異種の遺伝子型の細胞が混在している「キメラ」と呼ばれる胚は、これまでもつくられてきた。2017年にはベルモンテ教授も関わり、ヒトとブタのキメラ胚が世界で初めてつくられた。ヒツジの胚にヒトの細胞を加えた例もあった。同教授によると、そうした研究は、移植用臓器の深刻な不足を改善する可能性がある。また、人間の初期段階の成長や、病気の進行、老化について理解を深めることにもつながるという。「キメラの研究は、生命の最初期だけでなく最終期における生物医学研究を前進させるのにも、とても有用だ」ベルモンテ教授は、研究は倫理的および法的なガイドラインに沿ったものだと話す。「究極的には、私たちは人間の健康を理解し増進させるために、こうした研究をやっている」

科学者の中には、今回の実験に懸念を表明する人もいる。今回つくられた胚は20日で破壊したが、それ以上研究を進めようとする人が出てくる可能性もあると訴えている。また、ヒトとそれ以外のキメラをつくることの影響について、社会的な議論が必要だと主張している。英イースト・アングリア大学医学部で生物医学倫理を教え、研究もしているアナ・スメイダー博士は、今回の実験が「重要な倫理的、法的問題」を突きつけていると話す。「この研究に関わった科学者たちは、『特定の実験は人間でできない』と言って、キメラ胚が新たな機会を提供すると主張している。しかし、それらの胚がヒトなのか、そうではないのかは考えるべき問題だ」オックスフォード大学のジュリアン・サヴレスキュー教授は、今回の研究が「ヒトとヒト以外のキメラというパンドラの箱を開ける」ものだと述べた。「今回の胚は成長20日目に破壊されたが、ヒトとヒト以外のキメラが開発されるのは時間の問題だ。おそらく移植用臓器をつくる目的で実行されるだろう。それがこの研究の長期的目標の1つになっている」

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